平成11年3月


危機管理について


 組合員Sさんがいっていた。この1月から3月にかけてが、われわれの業界にとっても正念場であろう。長い不況は、未だ体験したことのないものであり、いまに景気は回復するだろうというかつての体験とまったく違う状況に置かれている。
 バルブ期には随分と儲かったものだ。受注がこなせなくて、発注を断ったりしたこともあった。相手も注文を抱えていて、儲けにかかわっているのでなんとかしてくれといってくる。いまとなっては、そんな売手市場だった時代の回想に耽っているわけにもいかない。そんなことにこだわっていると、早くバルブ時代の身についた贅肉を落としなさい、といわれるのが落ちだろう。
 平成10年度の事業再構築雇用管理モデル事業もとりまとめに近づいている。再構築ということは、従来の経営管理体系を再検討するとともに一新しなければならないということだろう。雇用や賃金体系も従来のあり方を改善し時代に適合したものにしていかなければならないのである。中期的経営政策と従業員の教育研修プランは明確にしなければ、経営者と一丸となって難局に立ち向かうことはできないだろう。
 一方、Tさんは、事業再構築雇用管理モデル事業の一方の柱として、新規事業に取り組んでいる。紙器・段ボール箱業界だから既存の分野にだけこだわっていればよいというわけでもない。新製品開発は、雇用創出効果が期待できる。現実の雇用の増加が実現するかどうかはしばらくおくとしても、一方に起業家がいて新規に事業が勃興することが期待されているのである。新分野への挑戦が実を結ぶことを期待して止まない。
更にもう一つ注目しておきたいことは、リストラが叫ばれる昨今、中小企業も例外ではありえないということである。市場には厳しい競争の原理が支配していることは、周知のことである。その中に身を曝していかなければならない。中小企業施策の適用が、また、取引先による健全な中小企業の選別するといった方向性といったことがでてくるのではなかろうか。中小企業は弱者ではない。それ故に中小企業対策が、中小企業を丸ごと捉えて推進されることはありえないし、業者間取引も一層の選別が行われているのである。

動きをつくろう

 最近、危機管理ということばをよく耳にするが、別段、目新しいことばでもない。国家の危機管理とか、いろいろなレベルで使用されている。
 われわれの業界でもこのことばが口にのぼるようになっている。どういう場面で使われているのかを簡単に整理をしておこうと思う。
 当業界の主たる取引先の一つである繊維業界などは、長引く不況に直面しかつ消費者の繊維製品に対する価値観乃至価値基準の変貌に直面し、構造的不況という側面をも持ち合わせて苦況にある。
 廃業、倒産といったことが、日常茶飯事のこととなっており、某氏によると取引額が、最盛事の1/3に減少したともいわれている。
 減少といっても、他業者やブローカーの進出による得意先の減少ということも見逃すわけにはいかないであろう。そこには先程も述べたように、競争の原理が働いていて、先代からの取引先だから注文があるといったことや、どこと取引しても価格は同じだという横にらみの価値観を脱却している相手と競争しなけれならないのである。取引価格が問題であるならば、それを可能にする条件を競争の相手方が持ち合わせているということである。
 それと同時に、事業者(組合員)は、常に潜在的な危機的状況を抱えているのである。この特徴的なことは、ある日、突発的にやってくるということである。列挙してみよう。

@ 交通事故に遭遇する
A 経営者の病気による経営の中断
B 家族に関わる事故の発生
C 火災・震災など
D 不況がもたらす経営的問題状況の深刻化

などを想定することができるだろう。
 対応策については、究極的には企業の合併を考えるのであるが、それは当面、ただちに実行できる現実的な案ではないから、事業の協業化・共同化を考えながら一つの方向として準備をしてみてはどうであろうか。協業化の前提については、同業者としての組合員間の共生化を第一に考えなければならない。

(1)

各自の現在に取引先は尊重し、それ以外の取引先の開拓に、チームワークを発揮するのである。取引先の業者に対して売込のためのローラー作戦を実施する。そのためには、住宅地図上に表示された白地の業者に対して役割分担して、得意先の増大と事業の協業化・共同化の達成をめざす。

(2)

協業化・共同化の分野の拠点を確立する。このために、各自の出資による会社の設立というスキームの整備が必要であるが、これもただちに実行できる現実的な案ではないから、当面、機が熟するまでは、活動するための行動原理と意見の対立による紛争処理マニュアルの作成をすればよいであろう。

(3)

組合員以外の同業者と競争する手段として、共同仕入による原材料・副資財のコスト切り下げを考えている。昔からのことばに、利はもとにあり、といって仕入の重要性を訴えている。共同仕入は、その量の増大を相手方に保障するものである。その分、コストダウンが可能となるものである。

(4)

企業経営のうえで、無視できないことがある。それは、製品の納入についてである。組合員N社では、納品伝票に発注時に応じて、納品する日時を自ら指定している。取引先の恣意による配送の合理化を妨げられないためである。 われわれ協業化等を論議している組合員の中では、いますぐ、数個の製品を持って来い、という圧力を感じることがあるという。 お互いに、共通の地域の同じ業種の取引先と製品の配送をやりとりしているならば、共同配送のネットワークを形成してはどうかというのがここでの議論である。仮に、組合員10企業がそれぞれに配送する膨大なエネルギーを節約し、高い労働力をもっと有効活用しようということである。 この配送の一元化という合理化によって、経営余力と営業活動の活発化を達成したいと考えるものであり、できると信じるものである。

(5)

その他協業化・共同化のメリットは多々あるであろうし、逆に考える人がいてその実現の困難性をさまざまな理由をあげて論じる人もあるであろう。それも簡単に無視するわけにはいかないであろう。一段と工夫の要する点ではある。


 すべての中小企業を横並びに捉えて対策が立つようなことはないだろうと、いう意味のことを述べた。情報通信などの発達によって、企業活動のための障害がどの業者にたいしても無くなりつつある。平準化しているのである。いわゆるポーダーレス時代が到来したのである。競争は国境をも取り払ってしまう時代である。創造性を重視し、成功したものが報われ、そうでないものが衰退する、そういう覚悟が必要である。
 現在の危機的状況を前にして、再生か衰亡かという問題のたて方もできるであろう。その分岐点は今であり、その対応如何によるのである。



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